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synced 2025-12-16 22:37:49 +00:00
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Co-authored-by: Yuki Okushi <huyuumi.dev@gmail.com>
This commit is contained in:
@@ -12,7 +12,7 @@ translation_based_on_commit = "a8a6b725cff2e485bed76ff52ac1f18cec08cc7b"
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translators = ["woodyZootopia"]
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CPU例外は、例えば無効なメモリアドレスにアクセスしたときやゼロ除算したときなど、様々なミスによって発生します。それらに対して反応するために、ハンドラ関数を提供する **<ruby>割り込み記述子表<rp> (</rp><rt>interrupt descriptor table</rt><rp>) </rp></ruby>** を設定しなくてはなりません。この記事を読み終わる頃には、私達のカーネルは[ブレークポイント例外][breakpoint exceptions]を捕捉し、その後通常の実行を継続できるようになっているでしょう。
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CPU例外は、例えば無効なメモリアドレスにアクセスしたときやゼロ除算したときなど、様々なミスによって発生します。それらに対処するために、ハンドラ関数を提供する **<ruby>割り込み記述子表<rp> (</rp><rt>interrupt descriptor table</rt><rp>) </rp></ruby>** を設定しなくてはなりません。この記事を読み終わる頃には、私達のカーネルは[ブレークポイント例外][breakpoint exceptions]を捕捉し、その後通常の実行を継続できるようになっているでしょう。
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[breakpoint exceptions]: https://wiki.osdev.org/Exceptions#Breakpoint
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@@ -27,15 +27,15 @@ CPU例外は、例えば無効なメモリアドレスにアクセスしたと
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<!-- toc -->
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## 概要
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例外とは、今実行している命令はなにかおかしいぞ、ということを示すものです。例えば、現在の命令が0で割ろうとするときにCPUは例外を発します。例外が起こったら、CPUは現在行われている作業に割り込み、例外の種類に従って、即座に特定の例外ハンドラ関数を呼びます。
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例外とは、今実行している命令はなにかおかしいぞ、ということを示すものです。例えば、現在の命令がゼロ除算を実行しようとしているとき、CPUは例外を発します。例外が起こると、CPUは現在行われている作業に割り込み、例外の種類に従って、即座に特定の例外ハンドラ関数を呼びます。
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x86には20種類のCPU例外があります。中でも重要なものは:
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- **<ruby>ページフォルト<rp> (</rp><rt>Page Fault</rt><rp>) </rp></ruby>**: ページフォルトは不正なメモリアクセスの際に発生します。例えば、現在の命令がマップされていないページから読み込もうとしたり、読み込み専用のページに書き込もうとしたときに生じます。
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- **<ruby>無効な<rp> (</rp><rt>Invalid</rt><rp>) </rp></ruby><ruby>命令コード<rp> (</rp><rt>Opcode</rt><rp>) </rp></ruby>**: この例外は現在の命令が無効であるときに発生します。例えば、[SSE命令][SSE instructions]という新しい命令をサポートしていない旧式のCPU上でこれを実行しようとしたときに生じます。
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- **<ruby>一般保護違反<rp> (</rp><rt>General Protection Fault</rt><rp>) </rp></ruby>**: これは、例外の中でも、最もいろいろな理由で発生しうるものです。ユーザーレベルのコードで<ruby>特権命令<rp> (</rp><rt>privileged instruction</rt><rp>) </rp></ruby>を実行しようとしたときや、設定レジスタの保護領域に書き込もうとしたときなど、様々な種類のアクセス違反によって生じます。
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- **<ruby>ダブルフォルト<rp> (</rp><rt>Double Fault</rt><rp>) </rp></ruby>**: 例外が起こったとき、CPUは対応するハンドラ関数を呼び出そうとします。 この例外ハンドラを **呼び出している間に** 別の例外が起こった場合、CPUはダブルフォルト例外を出します。この例外はまた、ある例外に対してハンドラ関数が登録されていないときにも起こります。
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- **<ruby>トリプルフォルト<rp> (</rp><rt>Triple Fault</rt><rp>) </rp></ruby>**: CPUがダブルフォルトのハンドラ関数を呼び出そうとしている間に例外が発生したら、CPUは **トリプルフォルト** という致命的な例外を発します。トリプルフォルトを捕捉したり処理したりすることはできません。これが起こると、多くのプロセッサは自らをリセットしてOSを再起動することで対応します。
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- **<ruby>ダブルフォルト<rp> (</rp><rt>Double Fault</rt><rp>) </rp></ruby>**: 何らかの例外が起こったとき、CPUは対応するハンドラ関数を呼び出そうとします。 この例外ハンドラを **呼び出している間に** 別の例外が起こった場合、CPUはダブルフォルト例外を出します。この例外はまた、ある例外に対してハンドラ関数が登録されていないときにも起こります。
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- **<ruby>トリプルフォルト<rp> (</rp><rt>Triple Fault</rt><rp>) </rp></ruby>**: CPUがダブルフォルトのハンドラ関数を呼び出そうとしている間に例外が発生すると、CPUは **トリプルフォルト** という致命的な例外を発します。トリプルフォルトを捕捉したり処理したりすることはできません。これが起こると、多くのプロセッサは自らをリセットしてOSを再起動することで対応します。
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[SSE instructions]: https://en.wikipedia.org/wiki/Streaming_SIMD_Extensions
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@@ -49,7 +49,7 @@ x86には20種類のCPU例外があります。中でも重要なものは:
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型 | 名前 | 説明
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u16 | 関数ポインタ [0:15] | ハンドラ関数へのポインタの下位ビット。
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u16 | GDTセレクタ | [大域記述子表 (Global Descriptor Table)][global descriptor table] におけるコードセグメントを選ぶ。
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u16 | GDTセレクタ | [大域記述子表 (Global Descriptor Table)][global descriptor table] におけるコードセグメントのセレクタ。
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u16 | オプション | (下を参照)
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u16 | 関数ポインタ [16:31] | ハンドラ関数へのポインタの中位ビット。
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u32 | 関数ポインタ [32:63] | ハンドラ関数へのポインタの上位ビット。
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@@ -149,7 +149,7 @@ type HandlerFunc = extern "x86-interrupt" fn(_: &mut InterruptStackFrame);
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- 追加の引数はスタックで渡される
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- 結果は`rax`と`rdx`で返される
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注意してほしいのは、RustはC言語のABIに従っていない(実は、[RustにはABIすらまだありません][rust abi])ので、このルールは`extern "C" fn`と宣言された関数にしか適用しないということです。
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注意してほしいのは、RustはC言語のABIに従っていない(実は、[RustにはABIすらまだありません][rust abi])ので、このルールは`extern "C" fn`と宣言された関数にしか適用されないということです。
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[rust abi]: https://github.com/rust-lang/rfcs/issues/600
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@@ -184,11 +184,11 @@ _callee-saved_ | _caller-saved_
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しかし、例外と割り込みハンドラについては、リターンアドレスをプッシュするだけではだめです。なぜなら、割り込みハンドラはしばしば(スタックポインタや、CPUフラグなどが)異なる状況で実行されるからです。ですので、代わりに、CPUは割り込みが起こると以下の手順を実行します。
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1. **スタックポインタをアラインする**: 割り込みはあらゆる命令において発生しうるので、スタックポインタもあらゆる値を取る可能性があります。しかし、CPU命令のうちいくつか(例えばSSE命令の一部など)はスタックポインタが16バイトの倍数になっていることを要求するので、そうなるようにCPUは割り込みの直後にスタックポインタを<ruby>揃え<rp> (</rp><rt>アラインし</rt><rp>) </rp></ruby>ます。
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2. (場合によっては)**スタックを変更する**: スタックの変更は、例えばCPU例外がユーザーモードのプログラムで起こったときに、CPUの特権レベルを変更するときに起こります。いわゆる<ruby>割り込みスタック表<rp> (</rp><rt>Interrupt Stack Table</rt><rp>) </rp></ruby>を使うことで、特定の割り込みに対しスタックを変更するよう設定することも可能です。割り込みスタック表については次の記事で説明します。
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2. (場合によっては)**スタックを変更する**: スタックの変更は、例えばCPU例外がユーザーモードのプログラムで起こった場合のような、CPUの特権レベルを変更するときに起こります。いわゆる<ruby>割り込みスタック表<rp> (</rp><rt>Interrupt Stack Table</rt><rp>) </rp></ruby>を使うことで、特定の割り込みに対しスタックを変更するよう設定することも可能です。割り込みスタック表については次の記事で説明します。
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3. **古いスタックポインタをプッシュする**: CPUは、割り込みが発生した際の(アラインされる前の)スタックポインタレジスタ(`rsp`)とスタックセグメントレジスタ(`ss`)の値をプッシュします。これにより、割り込みハンドラからリターンしてきたときにもとのスタックポインタを復元することが可能になります。
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4. **`RFLAGS`レジスタをプッシュして更新する**: [`RFLAGS`]レジスタは状態や制御のための様々なビットを保持しています。割り込みに入るとき、CPUはビットのうちいくつかを変更し古い値をプッシュしておきます。
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5. **命令ポインタをプッシュする**: 割り込みハンドラ関数にジャンプする前に、CPUは命令ポインタ(`rip`)とコードセグメント(`cs`)をプッシュします。これは通常の関数呼び出しにおける戻り値のプッシュに対応します。
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6. **エラーコードをプッシュする** (for some exceptions): ページフォルトのような特定の例外の場合、CPUはエラーコードをプッシュします。これは、例外の原因を説明するものです。
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6. (例外によっては)**エラーコードをプッシュする**: ページフォルトのような特定の例外の場合、CPUはエラーコードをプッシュします。これは、例外の原因を説明するものです。
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7. **割り込みハンドラを呼び出す**: CPUは割り込みハンドラ関数のアドレスと<ruby>セグメント記述子<rp> (</rp><rt>segment descriptor</rt><rp>) </rp></ruby>をIDTの対応するフィールドから読み出します。そして、この値を`rip`と`cs`レジスタに書き出してから、ハンドラを呼び出します。
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[`RFLAGS`]: https://en.wikipedia.org/wiki/FLAGS_register
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@@ -307,7 +307,7 @@ error: `idt` does not live long enough
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= note: borrowed value must be valid for the static lifetime...
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`load`メソッドは(`idt`に)`&'static self`、つまりプログラムの実行されている間ずっと有効な参照を期待しています。これは、私達が別のIDTを読み込まない限り、CPUは割り込みのたびにこの表にアクセスするからです。そのため、`'static`より短いライフタイムの場合、<ruby>use-after-free<rp> (</rp><rt>解放後にアクセス</rt><rp>) </rp></ruby>バグが発生する可能性があります。
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`load`メソッドは(`idt`に)`&'static self`、つまりプログラムの実行されている間ずっと有効な参照を期待しています。これは、私達が別のIDTを読み込まない限り、CPUは割り込みのたびにこの表にアクセスするからです。そのため、`'static`より短いライフタイムの場合、<ruby>use-after-free<rp> (</rp><rt>メモリ解放後にアクセス</rt><rp>) </rp></ruby>バグが発生する可能性があります。
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実際、これはまさにここで起こっていることです。私達の`idt`はスタック上に生成されるので、`init`関数の中でしか有効ではないのです。この関数が終わると、このスタックメモリは他の関数に使い回されるので、CPUはどこかもわからないスタックメモリをIDTとして解釈してしまうのです。幸運にも、`InterruptDescriptorTable::load`メソッドは関数定義にこのライフタイムの要件を組み込んでいるので、Rustコンパイラはこのバグをコンパイル時に未然に防ぐことができたというわけです。
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