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@@ -28,7 +28,7 @@ translators = ["woodyZootopia"]
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オペレーティングシステムの主な役割の一つに、プログラムを互いに分離するということがあります。例えば、ウェブブラウザがテキストエディタに干渉してはいけません。この目的を達成するために、オペレーティングシステムはハードウェアの機能を利用して、あるプロセスのメモリ領域に他のプロセスがアクセスできないようにします。ハードウェアやOSの実装によって、さまざまなアプローチがあります。
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例として、ARM Cortex-Mプロセッサ(組み込みシステムに使われています)のいくつかには、[メモリ保護ユニット][_Memory Protection Unit_] (Memory Protection Unit, MPU) が搭載されており、異なるアクセス権限(例えば、アクセス不可、読み取り専用、読み書きなど)を持つメモリ領域を少数(例えば8個)定義できます。MPUは、メモリアクセスのたびに、そのアドレスが正しいアクセス許可を持つ領域にあるかどうかを確認し、そうでなければ例外を投げます。プロセスを変更するごとにその領域とアクセス許可を変更すれば、オペレーティングシステムはそれぞれのプロセスが自身のメモリにのみアクセスすることを保証し、したがってプロセスを互いに分離できます。
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例として、ARM Cortex-Mプロセッサ(組み込みシステムに使われています)のいくつかには、[メモリ保護ユニット][_Memory Protection Unit_] (Memory Protection Unit, MPU) が搭載されており、異なるアクセス権限(例えば、アクセス不可、読み取り専用、読み書きなど)を持つメモリ領域を少数(例えば8個)定義できます。MPUは、メモリアクセスのたびに、そのアドレスが正しいアクセス権限を持つ領域にあるかどうかを確認し、そうでなければ例外を投げます。プロセスを変更するごとにその領域とアクセス権限を変更すれば、オペレーティングシステムはそれぞれのプロセスが自身のメモリにのみアクセスすることを保証し、したがってプロセスを互いに分離できます。
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[_Memory Protection Unit_]: https://developer.arm.com/docs/ddi0337/e/memory-protection-unit/about-the-mpu
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@@ -39,11 +39,11 @@ x86においては、ハードウェアは2つの異なるメモリ保護の方
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## セグメンテーション
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セグメンテーションは1978年にはすでに導入されており、当初の目的はアドレス可能なメモリの量を増やすためでした。当時、CPUは16bitのアドレスしか使えなかったので、アドレス可能なメモリは64KiBに限られていました。この64KiBを超えてアクセスするために、セグメントレジスタが追加され、このそれぞれにオフセットアドレスが格納されるようになりました。CPUがメモリにアクセスするとき、毎回このオフセットを自動的に加算するので、最大1MiBのメモリにアクセスできるようになりました。
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セグメンテーションは1978年にはすでに導入されており、当初の目的はアドレス可能なメモリの量を増やすことでした。当時、CPUは16bitのアドレスしか使えなかったので、アドレス可能なメモリは64KiBに限られていました。この64KiBを超えてアクセスするために、セグメントレジスタが追加され、このそれぞれにオフセットアドレスを格納するようになりました。CPUがメモリにアクセスするとき、毎回このオフセットを自動的に加算するようにすることで、最大1MiBのメモリにアクセスできるようになりました。
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メモリアクセスの種類によって、セグメントレジスタは自動的にCPUによって選ばれます。命令の<ruby>引き出し<rp> (</rp><rt>フェッチ</rt><rp>) </rp></ruby>にはコードセグメント`CS`が使用され、スタック操作(プッシュ・ポップ)にはスタックセグメント`SS`が使用されます。その他の命令では、データセグメント`DS`やエクストラセグメント`ES`が使用されます。その後、自由に使用できる`FS`と`GS`というセグメントレジスタも追加されました。
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セグメンテーションの初期バージョンでは、セグメントレジスタは直接オフセットを格納しており、アクセス制御は行われていませんでした。これは後に[<ruby>プロテクトモード<rp> (</rp><rt>protected mode</rt><rp>) </rp></ruby>][_protected mode_]が導入されたことで変更されました。CPUがこのモードで実行している時、セグメント<ruby>記述子<rp> (</rp><rt>ディスクリプタ</rt><rp>) </rp></ruby>は<ruby>局所<rp> (</rp><rt>ローカル</rt><rp>) </rp></ruby>または<ruby>大域<rp> (</rp><rt>グローバル</rt><rp>) </rp>[**</ruby><ruby>記述子表<rp> (</rp><rt>ディスクリプタテーブル</rt><rp>) </rp></ruby>**][_descriptor table_]を格納します。これには(オフセットアドレスに加えて)セグメントのサイズとアクセス<ruby>許可設定<rp> (</rp><rt>パーミッション</rt><rp>) </rp></ruby>が格納されます。それぞれのプロセスに対し、メモリアクセスをプロセスのメモリ領域にのみ制限するような大域/局所記述子表をロードすることで、OSはプロセスを互いに隔離できます。
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セグメンテーションの初期バージョンでは、セグメントレジスタは直接オフセットを格納しており、アクセス制御は行われていませんでした。これは後に[<ruby>プロテクトモード<rp> (</rp><rt>protected mode</rt><rp>) </rp></ruby>][_protected mode_]が導入されたことで変更されました。CPUがこのモードで実行している時、セグメント<ruby>記述子<rp> (</rp><rt>ディスクリプタ</rt><rp>) </rp></ruby>は<ruby>局所<rp> (</rp><rt>ローカル</rt><rp>) </rp></ruby>または<ruby>大域<rp> (</rp><rt>グローバル</rt><rp>) </rp>[**</ruby><ruby>記述子表<rp> (</rp><rt>ディスクリプタテーブル</rt><rp>) </rp></ruby>**][_descriptor table_]を格納します。これには(オフセットアドレスに加えて)セグメントのサイズとアクセス権限が格納されます。それぞれのプロセスに対し、メモリアクセスをプロセスのメモリ領域にのみ制限するような大域/局所記述子表をロードすることで、OSはプロセスを互いに隔離できます。
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[_protected mode_]: https://en.wikipedia.org/wiki/X86_memory_segmentation#Protected_mode
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[_descriptor table_]: https://en.wikipedia.org/wiki/Global_Descriptor_Table
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@@ -112,11 +112,11 @@ x86においては、ハードウェアは2つの異なるメモリ保護の方
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それぞれのメモリアクセスにおいて、CPUはテーブルへのポインタをレジスタから読み出し、テーブル内のアクセスされたページから対応するフレームを見つけ出します。これは完全にハードウェア内で行われ、実行しているプログラムからはこの動作は見えません。変換プロセスを高速化するために、多くのCPUアーキテクチャは前回の変換の結果を覚えておく専用のキャッシュを持っています。
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アーキテクチャによっては、ページテーブルのエントリは"Flags"フィールドにあるアクセス許可のような属性も保持できます。上の例では、"r/w"フラグがあることにより、このページは読み書きのどちらも可能だということを示しています。
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アーキテクチャによっては、ページテーブルのエントリは"Flags"フィールドにあるアクセス権限のような属性も保持できます。上の例では、"r/w"フラグがあることにより、このページは読み書きのどちらも可能だということを示しています。
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### <ruby>複数層<rp> (</rp><rt>Multilevel</rt><rp>) </rp></ruby>ページテーブル
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上で見たシンプルなページテーブルには、アドレス空間が大きくなってくると問題が発生します:メモリが無駄になるのです。たとえば、`0`, `1_000_000`, `1_000_050` および `1_000_100`(3ケタごとの区切りとして`_`を用いています)の4つの仮想ページを使うプログラムを考えてみましょう。
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上で見たシンプルなページテーブルは、アドレス空間が大きくなってくると問題が発生します:メモリが無駄になるのです。たとえば、`0`, `1_000_000`, `1_000_050` および `1_000_100`(3ケタごとの区切りとして`_`を用いています)の4つの仮想ページを使うプログラムを考えてみましょう。
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@@ -130,13 +130,13 @@ x86においては、ハードウェアは2つの異なるメモリ保護の方
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ページ0は最初の`10_000`バイト領域に入るので、レベル2ページテーブルの最初のエントリを使います。このエントリはT1というレベル1ページテーブルを指し、このページテーブルはページ`0`はフレーム`0`に対応すると指定します。
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ページ`1_000_000`, `1_000_050`および`1_000_100`はすべて、`10_000`バイトの大きさの領域100個目に入るので、レベル2ページテーブルの100個目のエントリを使います。このエントリは、T2というべつのレベル1テーブルを指しており、このレベル1テーブルはこれらの3つのページをフレーム`100`, `150`および`200`に対応させています。レベル1テーブルにおけるページアドレスには領域のオフセットは含まれていない、つまり例えば、`1_000_050`というページのエントリは単に`50`である、ということに注意してください。
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ページ`1_000_000`, `1_000_050`および`1_000_100`はすべて、`10_000`バイトの大きさの領域100個目に入るので、レベル2ページテーブルの100個目のエントリを使います。このエントリは、T2という別のレベル1テーブルを指しており、このレベル1テーブルはこれらの3つのページをフレーム`100`, `150`および`200`に対応させています。レベル1テーブルにおけるページアドレスには領域のオフセットは含まれていない、つまり例えば、ページ`1_000_050`のエントリは単に`50`である、ということに注意してください。
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レベル2テーブルにはまだ100個の空のエントリがありますが、前の100万にくらべればこれはずっと少ないです。これほど節約できる理由は、`10_000`から`10_000_000`の、対応付けのないメモリ領域のためのレベル1テーブルを作る必要がないためです。
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レベル2テーブルにはまだ100個の空のエントリがありますが、前の100万にくらべればこれはずっと少ないです。このように節約できる理由は、`10_000`から`10_000_000`の、対応付けのないメモリ領域のためのレベル1テーブルを作る必要がないためです。
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2層ページテーブルの理論は、3、4、それ以上に多くの層に拡張できます。このとき、ページテーブルレジスタは最も高いレベルのテーブルを指し、そのテーブルは次に低いレベルのテーブルを指し、それはさらに低いレベルのものを、と続きます。そして、レベル1のテーブルは対応するフレームを指します。この理論は一般に **<ruby>複数層<rp> (</rp><rt>multilevel</rt><rp>) </rp></ruby>** ページテーブルや、 **<ruby>階層型<rp> (</rp><rt>hierarchical</rt><rp>) </rp></ruby>** ページテーブルと呼ばれます。
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2層ページテーブルの原理は、3、4、それ以上に多くの層に拡張できます。このとき、ページテーブルレジスタは最も高いレベルのテーブルを指し、そのテーブルは次に低いレベルのテーブルを指し、それはさらに低いレベルのものを、と続きます。そして、レベル1のテーブルは対応するフレームを指します。この原理は一般に **<ruby>複数層<rp> (</rp><rt>multilevel</rt><rp>) </rp></ruby>** ページテーブルや、 **<ruby>階層型<rp> (</rp><rt>hierarchical</rt><rp>) </rp></ruby>** ページテーブルと呼ばれます。
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ページングと複数層ページテーブルのしくみが理解できたので、x86_64アーキテクチャにおいてどのようにページングが実装されているのかについて見ていきましょう(以下では、CPUは64ビットモードで動いているとします)。
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ページングと複数層ページテーブルの仕組みが理解できたので、x86_64アーキテクチャにおいてどのようにページングが実装されているのかについて見ていきましょう(以下では、CPUは64ビットモードで動いているとします)。
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## x86_64におけるページング
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@@ -146,25 +146,25 @@ x86_64アーキテクチャは4層ページテーブルを使っており、ペ
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それぞれのテーブルインデックスは9ビットからなることがわかります。それぞれのテーブルに2^9 = 512エントリあることを考えるとこれは妥当です。最下位の12ビットは4KiBページ内でのオフセット(2^12バイト = 4KiB)です。48ビットから64ビットは捨てられます。つまり、x86_64は48ビットのアドレスにしか対応しておらず、そのため実際には64ビットではないということです。
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それぞれのテーブルインデックスは9ビットからなることがわかります。それぞれのテーブルに2^9 = 512エントリあることを考えるとこれは妥当です。最下位の12ビットは4KiBページ内でのオフセット(2^12バイト = 4KiB)です。48ビットから64ビットは捨てられます。つまり、x86_64は48ビットのアドレスにしか対応しておらず、そのため(64ビットアーキテクチャなどとよく呼ばれるが)実際には64ビットではないということです。
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[5-level page table]: https://en.wikipedia.org/wiki/Intel_5-level_paging
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48ビットから64ビットが捨てられるからといって、任意の値にしてよいということではありません。この範囲のすべてのビットは、アドレスを一意にし、5層ページテーブルのような将来の拡張に備えるため、47ビットの値と同じにしないといけません。これは、[2の補数における符号拡張][sign extension in two's complement]によく似ているので、 **<ruby>符号<rp> (</rp><rt>sign</rt><rp>) </rp></ruby><ruby>拡張<rp> (</rp><rt>extension</rt><rp>) </rp></ruby>** とよばれています。アドレスが適切に符号拡張されていない場合、CPUは例外を投げます。
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48ビットから64ビットが捨てられるからといって、任意の値にしてよいということではありません。アドレスを一意にし、5層ページテーブルのような将来の拡張に備えるため、この範囲のすべてのビットは47ビットの値と同じにしないといけません。これは、[2の補数における符号拡張][sign extension in two's complement]によく似ているので、 **<ruby>符号<rp> (</rp><rt>sign</rt><rp>) </rp></ruby><ruby>拡張<rp> (</rp><rt>extension</rt><rp>) </rp></ruby>** とよばれています。アドレスが適切に符号拡張されていない場合、CPUは例外を投げます。
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[sign extension in two's complement]: https://en.wikipedia.org/wiki/Two's_complement#Sign_extension
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近年発売されたIntelのIce LakeというCPUは、[5層ページテーブル][5-level page tables]にオプションで対応していて、仮想アドレスが48ビットから57ビットまで延長されているということは書いておく価値があるでしょう。いまの段階で私たちのカーネルをこの特定のCPUに最適化する意味はないので、この記事では標準の4層ページテーブルのみを使うことにします。
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近年発売されたIntelのIce LakeというCPUは、[5層ページテーブル][5-level page tables]を使用することもでき、そうすると仮想アドレスが48ビットから57ビットまで延長されるということは書いておく価値があるでしょう。いまの段階で私たちのカーネルをこの特定のCPUに最適化する意味はないので、この記事では標準の4層ページテーブルのみを使うことにします。
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[5-level page tables]: https://en.wikipedia.org/wiki/Intel_5-level_paging
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### 変換の例
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この変換プロセスの仕組みをより詳細に理解するために、例を挙げてみてみましょう。
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この変換の仕組みをより詳細に理解するために、例を挙げて見てみましょう。
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現在有効なレベル4ページテーブルの物理アドレス、つまりレベル4ページテーブルの「<ruby>根<rp> (</rp><rt>root</rt><rp>) </rp></ruby>」は`CR3`レジスタに格納されています。それぞれのページテーブルエントリは、次のレベルのテーブルの物理フレームを指しています。そして、レベル1のテーブルは対応するフレームを指しています。なお、ページテーブル内のアドレスは全て仮想ではなく物理アドレスであることに注意してください。さもなければ、CPUは(変換プロセス中に)それらのアドレスも変換しなくてはならず、無限再帰に陥ってしまうかもしれないからです。
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現在有効なレベル4ページテーブルの物理アドレス、つまりレベル4ページテーブルの「根」は`CR3`レジスタに格納されています。それぞれのページテーブルエントリは、次のレベルのテーブルの物理フレームを指しています。そして、レベル1のテーブルは対応するフレームを指しています。なお、ページテーブル内のアドレスは全て仮想ではなく物理アドレスであることに注意してください。さもなければ、CPUは(変換プロセス中に)それらのアドレスも変換しなくてはならず、無限再帰に陥ってしまうかもしれないからです。
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上のページテーブル階層構造は、最終的に(青色の)2つのページへの対応を行っています。ページテーブルのインデックスから、これらの2つのページの仮想アドレスは`0x803FE7F000`と`0x803FE00000`であると推論できます。プログラムがアドレス`0x803FE7F5CE`から読み込もうとしたときに何が起こるかを見てみましょう。まず、アドレスを2進数に変換し、アドレスのページテーブルインデックスとページオフセットが何であるかを決定します:
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@@ -181,9 +181,9 @@ x86_64アーキテクチャは4層ページテーブルを使っており、ペ
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レベル1テーブルにあるこのページのパーミッション(訳注:ページテーブルにおいて、Flagsとある列)は`r`であり、これは読み込み専用という意味です。これらのようなパーミッションに対する侵害はハードウェアによって保護されており、このページに書き込もうとした場合は例外が投げられます。より高いレベルのページにおけるパーミッションは、下のレベルにおいて可能なパーミッションを制限します。たとえばレベル3エントリを読み込み専用にした場合、下のレベルで読み書きを許可したとしても、このエントリを使うページはすべて書き込み不可になります。
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レベル1テーブルにあるこのページの権限は`r`であり、これは読み込み専用という意味です。これらのような権限に対する侵害はハードウェアによって保護されており、このページに書き込もうとした場合は例外が投げられます。より高いレベルのページにおける権限は、下のレベルにおいて可能な権限を制限します。たとえばレベル3エントリを読み込み専用にした場合、下のレベルで読み書きを許可したとしても、このエントリを使うページはすべて書き込み不可になります。
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この例ではそれぞれのテーブルの<ruby>実体<rp> (</rp><rt>インスタンス</rt><rp>) </rp></ruby>を1つずつしか使いませんでしたが、普通それぞれのアドレス空間において、各レベルに対して複数のインスタンスが使われるということは知っておく価値があるでしょう。最大で
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この例ではそれぞれのテーブルの<ruby>実体<rp> (</rp><rt>インスタンス</rt><rp>) </rp></ruby>を1つずつしか使いませんでしたが、普通、それぞれのアドレス空間において、各レベルに対して複数のインスタンスが使われるということは知っておく価値があるでしょう。最大で
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- 1個のレベル4テーブル
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- 512個のレベル3テーブル(レベル4テーブルには512エントリあるので)
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@@ -194,7 +194,7 @@ x86_64アーキテクチャは4層ページテーブルを使っており、ペ
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### ページテーブルの形式
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x86_64アーキテクチャにおけるページテーブルは詰まるところ512個のエントリの配列です。Rustの構文では:
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x86_64アーキテクチャにおけるページテーブルは詰まるところ512個のエントリの配列です。Rustの構文では以下のようになります:
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```rust
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#[repr(align(4096))]
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@@ -247,12 +247,18 @@ pub struct PageTable {
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4層ページテーブルを使うと、仮想アドレスを変換するたびに4回メモリアクセスを行わないといけないので、変換のコストは大きくなります。性能改善のために、x86_64アーキテクチャは、直前数回の変換内容を **トランスレーション・ルックアサイド・バッファ (translation lookaside buffer, TLB)** と呼ばれるところにキャッシュします。これにより、前の変換がまだキャッシュされているなら、変換をスキップできます。
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他のCPUキャッシュと異なり、TLBは完全に透明ではなく、ページテーブルの内容が変わったときに変換内容を更新したり取り除いたりしてくれません(訳注:キャッシュが<ruby>透明<rp> (</rp><rt>transparent</rt><rp>) </rp></ruby>であるとは、利用者がキャッシュの存在を意識する必要がないという意味)。つまり、カーネルがページテーブルを変更したときは、カーネル自らTLBを更新しないといけないということです。これを行うために、[`invlpg`]("invalidate page"、ページを無効化の意)という特別なCPU命令があります。これは指定されたページの変換をTLBから取り除き、次のアクセスの際に再び読み込まれるようにします。また、TLBは`CR3`レジスタを再読み込みすることでも初期化できます。`CR3`レジスタの再読み込み、アドレス空間が変更されたという状況を模擬するのです。`x86_64`クレートの[`tlb`モジュール][`tlb` module]が、両方のやり方のRust関数を提供しています。
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他のCPUキャッシュと異なり、TLBは完全に透明ではなく、ページテーブルの内容が変わったときに変換内容を更新したり取り除いたりしてくれません(訳注:キャッシュが<ruby>透明<rp> (</rp><rt>transparent</rt><rp>) </rp></ruby>であるとは、利用者がキャッシュの存在を意識する必要がないという意味)。つまり、カーネルがページテーブルを変更したときは、カーネル自らTLBを更新しないといけないということです。これを行うために、[`invlpg`]("invalidate page"、ページを無効化の意)という特別なCPU命令があります。これは指定されたページの変換をTLBから取り除き、次のアクセスの際に再び読み込まれるようにします。また、TLBは`CR3`レジスタを再設定することでもflushできます。`CR3`レジスタの再設定は、アドレス空間が変更されたという状況を模擬するのです。`x86_64`クレートの[`tlb`モジュール][`tlb` module]が、両方のやり方のRust関数を提供しています。
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<div class="note">
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**訳注:** flushは「(溜まった水を)どっと流す」「(トイレなどを)水で洗い流す」という意味の言葉です。そのためコンピュータサイエンスにおいて「キャッシュなどに溜められていたデータを(場合によっては適切な出力先に書き込みながら)削除する」という意味を持つようになりました。ここではどこかに出力しているわけではないので、「初期化」と同じような意味と考えて差し支えないでしょう。
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</div>
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[`invlpg`]: https://www.felixcloutier.com/x86/INVLPG.html
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[`tlb` module]: https://docs.rs/x86_64/0.13.2/x86_64/instructions/tlb/index.html
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ページテーブルを修正したときは毎回TLBを初期化しないといけないことはしっかりと覚えておいてください。さもないと、CPUは古い変換を使いつづけるかもしれず、これはデバッグの非常に難しい、予測不能なバグに繋がるかもしれないためです。
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ページテーブルを修正したときは毎回TLBをflushしないといけないということはしっかりと覚えておいてください。これを行わないと、CPUは古い変換を使いつづけるかもしれず、これはデバッグの非常に難しい、予測不能なバグに繋がるかもしれないためです。
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## 実装
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@@ -262,7 +268,7 @@ pub struct PageTable {
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つまり、私達がカーネルにおいて使ってきたすべてのメモリアドレスは、仮想アドレスだったということです。アドレス`0xb8000`にあるVGAバッファへのアクセスが上手くいっていたのは、ひとえにブートローダがこのメモリページを **恒等対応** させていた、つまり、仮想ページ`0xb8000`を物理フレーム`0xb8000`に対応させていたからです。
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ページングにより、境界外メモリアクセスをしてもおかしな物理メモリに書き込むのではなくページフォルト例外を起こすようになっているため、私達のカーネルはすでに比較的安全になっていました。ブートローダはそれぞれのページに正しいパーミッションを設定しさえしてくれるので、コードを含むページだけが実行可能であり、データを含むページだけが書き込み可能になっています。
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ページングにより、境界外メモリアクセスをしてもおかしな物理メモリに書き込むのではなくページフォルト例外を起こすようになっているため、私達のカーネルはすでに比較的安全になっていました。ブートローダはそれぞれのページに正しい権限を設定することさえしてくれるので、コードを含むページだけが実行可能であり、データを含むページだけが書き込み可能になっています。
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### ページフォルト
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@@ -279,7 +285,7 @@ lazy_static! {
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[…]
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idt.page_fault.set_handler_fn(page_fault_handler); // new
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idt.page_fault.set_handler_fn(page_fault_handler); // ここを追加
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idt
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};
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@@ -321,11 +327,11 @@ pub extern "C" fn _start() -> ! {
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blog_os::init();
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// new
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// ここを追加
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let ptr = 0xdeadbeaf as *mut u32;
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unsafe { *ptr = 42; }
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// as before
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// ここはこれまでと同じ
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#[cfg(test)]
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test_main();
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@@ -368,7 +374,7 @@ println!("write worked");
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### ページテーブルへのアクセス
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私達のカーネルがどのように(実メモリに)対応づけられているのかを定義しているページテーブルを見てみましょう。
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私達のカーネルがどのように(物理メモリに)対応づけられているのかを定義しているページテーブルを見てみましょう。
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```rust
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// in src/main.rs
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@@ -384,11 +390,11 @@ pub extern "C" fn _start() -> ! {
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let (level_4_page_table, _) = Cr3::read();
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println!("Level 4 page table at: {:?}", level_4_page_table.start_address());
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[…] // test_main(), println(…), and hlt_loop()
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[…] // test_main(), println(…), hlt_loop() などが続く
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}
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```
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`x86_64`クレートの[`Cr3::read`]関数は、現在有効なレベル4ページテーブルを`CR3`レジスタから(読みとって)返します。この関数は[`PhysFrame`]型と[`Cr3Flags`]型のタプルを返します。私達はフレームにしか興味がないので、タプルの2つ目の要素は無視しました。
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`x86_64`クレートの[`Cr3::read`]関数は、現在有効なレベル4ページテーブルを`CR3`レジスタから読みとって返します。この関数は[`PhysFrame`]型と[`Cr3Flags`]型のタプルを返します。私達はフレームにしか興味がないので、タプルの2つ目の要素は無視しました。
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[`Cr3::read`]: https://docs.rs/x86_64/0.13.2/x86_64/registers/control/struct.Cr3.html#method.read
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[`PhysFrame`]: https://docs.rs/x86_64/0.13.2/x86_64/structures/paging/frame/struct.PhysFrame.html
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@@ -404,15 +410,15 @@ Level 4 page table at: PhysAddr(0x1000)
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[`PhysAddr`]: https://docs.rs/x86_64/0.13.2/x86_64/addr/struct.PhysAddr.html
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ページングが有効なとき、物理メモリに直接アクセスすることはできません。もしそれができたら、プログラムは容易くメモリ保護を回避して他のプログラムのメモリにアクセスできてしまうだろうからです。ですので、テーブルにアクセスする唯一の方法は、アドレス`0x1000`の物理フレームに対応づけられているような仮想ページにアクセスすることです。ページテーブルの存在するフレームへの対応づけを作るのは(実用上も必要になる)一般的な問題です。なぜなら、例えば新しいスレッドのためにスタックを割り当てるときなど、カーネルは日常的にページテーブルにアクセスする必要があるためです。
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ページングが有効なとき、物理メモリに直接アクセスすることはできません。もしそれができたとしたら、プログラムは容易くメモリ保護を回避して他のプログラムのメモリにアクセスできてしまうだろうからです。ですので、テーブルにアクセスする唯一の方法は、アドレス`0x1000`の物理フレームに対応づけられているような仮想ページにアクセスすることです。ページテーブルの存在するフレームへの対応づけは(実用上も必要になる)一般的な問題です。なぜなら、例えば新しいスレッドのためにスタックを割り当てるときなど、カーネルは日常的にページテーブルにアクセスする必要があるためです。
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この問題への解決策は次の記事で詳細に論じます。
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## まとめ
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この記事では2つのメモリ保護技術を紹介しました:セグメンテーションとページングです。前者は可変サイズのメモリ領域を使用するため外部断片化の問題が存在するのに対し、後者は固定サイズのページを使用するためアクセス許可に関して遥かに細やかな制御が可能となっていました。
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この記事では2つのメモリ保護技術を紹介しました:セグメンテーションとページングです。前者は可変サイズのメモリ領域を使用するため外部断片化の問題が存在するのに対し、後者は固定サイズのページを使用するためアクセス権限に関して遥かに細やかな制御が可能となっていました。
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ページングは、(仮想メモリと物理メモリの)対応情報を1層以上のページテーブルに格納します。x86_64アーキテクチャにおいては4層ページテーブルが使用され、ページサイズは4KiBです。ハードウェアは自動的にページテーブルを辿り、変換の結果をトランスレーション・ルックアサイド・バッファ (TLB) にキャッシュします。このバッファは自動的に更新されない(「透明ではない」)ので、ページテーブルの変更時には明示的に初期化する必要があります。
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ページングは、(仮想メモリと物理メモリの)対応情報を1層以上のページテーブルに格納します。x86_64アーキテクチャにおいては4層ページテーブルが使用され、ページサイズは4KiBです。ハードウェアは自動的にページテーブルを辿り、変換の結果をトランスレーション・ルックアサイド・バッファ (TLB) にキャッシュします。このバッファは自動的に更新されない(「透明ではない」)ので、ページテーブルの変更時には明示的にflushする必要があります。
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私達のカーネルは既にページングによって動いており、不正なメモリアクセスはページフォルト例外を発生させるということを学びました。現在有効なページテーブルへとアクセスしたかったのですが、CR3レジスタに格納されている物理アドレスはカーネルから直接アクセスできないものであるため、それはできませんでした。
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